昨日のブログを早速読んでいただき、いくつか個人的にコメントを頂いた。最後の部分が混乱していたようなので、もう一度トライしたい。
新型コロナウイルス感染者が日に日に増えている状態で、いわゆるオーバーシュートを防ぐためには、経済活動を大幅に縮小する必要がある。経済対策もこのことを念頭において設計されなければならない。いままでも、外出の自粛、在宅勤務、休業などによって、多くの人・企業が経済活動を縮小してきた。しかし、経済活動の縮小が当該個人そしてその近親者の感染を防ぐという便益は、社会全体が感染拡大の防止から受ける便益に比べて低い。これは経済学で言う外部性の問題である。
他の外部経済の例と比較してみるとわかりやすいかも知れない。例としてよく使われるのは新技術の研究開発である。新技術を開発して、それを実用化した商品を作れば、当然お金になるが、社会的にはもっと大きい利益がある。その技術からヒントを得て、他の会社が違う商品を作ってそれが社会に喜ばれるかもしれない。あるいは、その技術が他の分野での技術革新につながるかも知れない。ところが、そうした個人の利益を超えた社会的便益を開発者は計算に入れないので、研究開発投資はどうしても社会的に最適な水準よりも低くなってしまう。ここに、たとえば政府が補助金を出して研究開発投資を支援するという政策の正当性がある。
同様に、現在では、個々人のそして会社の自粛や営業時間の短縮の度合が、社会的に感染の急拡大を防ぐために最適な水準に比べて低すぎる、という問題がある。自粛を必要だと思う以上に行う個人に、そして社会のために休業する企業に、その行動に対して補償するというかたちで、政府は個人の行動を社会的に望ましい方向に誘導することができる。発表された経済対策はこの点で不足している。自分の行動にそれほど密接に関連しない給付では、人々のいまの行動に影響を及ぼすことはできないからである。