WHOとトランプ

トランプ大統領がかねてから過度に中国寄りだと批判してきたWHOに、こんどは資金拠出を停止する、と言い出した。トランプの言うことだから驚きはしないが、まったく的外れな対応である。いろいろ報道されているように、WHOが中国に遠慮したところはあるかもしれないが、それはメンバー諸国に強制権をもたない国際機関の性格によるところも大きいだろう。いずれにしても、WHOの活動を通常よりも支援しなければならないこの時期に、国際機関が遠慮すると言えば中国の比ではないアメリカの大統領が発言すべきことではない。もっと一般的にコロナウイルスによるパンデミックを終息の方向に向かわせるためにトランプができる最良のことは黙ることではないか、とも思ったりする。

こうした時に、数日前に日本をはじめとするASEAN+3の諸国が、WHOの重要性を指摘してより一層の国際連携へのコミットメントを表明した文書を発表したのは良かったと思う。

中国の立場から考えると、アメリカこそ10年前にリーマン・ショックの時に、国内の取り組みが遅れて世界中に危機を拡散してしまったではないか、と批判したいかもしれない。今回わかったことの一つは、資金の流れを隔離して金融的ショックの拡散を防ぐことに比べて、人の流れを止めて感染力の高いウイルスの拡散を防ぐのがいかに難しいか、ということかもしれない。ウイルスの国際的拡散を防ぐために、中国が武漢の封鎖など実際にやったこと以上にどれくらいのことをやることができたか、疑問である。

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