現金給付:減収世帯30万円か一人10万円か

東京都をはじめとする7地域に出されていた非常事態宣言が、全国に広げられることになった。遅かったという指摘もあるが、大都市に限った対策よりも全国に広げた方が、感染症の拡大防止の観点からは効果があるのは確かだろう。経済的コストも大きくなるが、諸外国に比べても東京都に比べて、政府は経済的コストを過大評価し、感染症の拡大のコストを過小評価していたと思われるので、妥当な政策変更だと言えるだろう。

東京都も、4月15日に独自の緊急対策を発表した。国の緊急対策に比べて一歩進んだもので、評価できる。ひとつ注目したいのは、「国への緊急要望」というセクション(31ページから)である。ここでは、東京都からみて、国のレベルで一層力を入れてほしい、あるいは新たに実行してほしい政策などを、挙げている。国レベルでの政策はどうしても全国共通の視点に立たざるを得ないので、限られた地域では(それが東京のような大都市であっても)切実な問題でも取りこぼしてしまう、ということが起こるだろう。そのような時に、都府県レベルあるいはそれよりも小さいレベルでの情報を、このような形で中央政府に要望していくのは、政府が本当に効果的な政策を作る上で助けになるだろう。今回の危機に限らず、これから定着していくことが望まれる動きである。

政府が本当に効果的な政策を作ることができているかという観点から、現金給付をどのように行うかをめぐる混迷は注視したい。もともとは減収世帯に一世帯あたり30万円と発表されたが、自民党の中からも異見が唱えられ、そして最終的には公明党の強い要望により所得制限なしの一人当たり10万円ということになりそうである。これは、現政権が、地方政府だけでなく、政権与党内部の意見もくみ上げていなかったということで、反省しなければならない。公平性の観点から給付を減収世帯に限るという考えは理解できれば、もとの案では減収を証明する書類などが必要とされて、受給者にとって面倒になるだけでなく、実際の給付がかなり遅れるとよそうされた。もし、一人一律10万円にすることによって、迅速に給付を行うことができるなら、これは望ましい政策変更だろう。公平性からの調整は将来の徴税でも行うことができる。ただし、政策変更のために時間を費やして結局給付が遅れるようでは問題である。

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