民間金融機関を通じた実質無利子融資制度

日経の記事によると、緊急経済対策のなかの事業者向けの施策の重要な一つである実質無利子融資が実際に行われるのは、「最速で5月半ば」でたぶんもっと遅くなるはずだという。危機的状況を緩和して、事業を持続できるようにするためのものなので、スピードが最重要のはずだ。5月半ばでも遅いという実感は否めない。

遅い理由には、補正予算の成立が遅れているということもあるが、主要な要因はその制度が複雑なことにあるようだ。現存の都道府県による制度融資の枠組みを使うということだが、これはスピードを考えないで設計された制度であり、危機対応の道具としては不便である。まず、企業は市町村に現状の困難を申請し、市町村は審査の後に制度の対象になることを決定し、それを受けて企業が銀行に融資を申し込むと同時に保証委員会への補償を申し込み、それが承認されて初めて融資が実行される。実質無利子を実現するために、企業に後日利子分を支払うのか、銀行に利子補給をするのかは、まだ決まっていないようだ。それとも各都道府県に任せるのだろうか?

もっと簡単な制度を新たに作る方が簡単ではないかと思う。融資の判断は、企業がこの制度の対象になっているかも含めて、民間金融機関に任せるようにすれば、かなり簡単になるのではないかと思う。利子補給の分も事後的に国が民間金融機関にまとめて払うのが簡単なように思う。

この危機で苦しんでいるが、いずれ立ち直れる顧客を助けるために、国の補助が得られるなら、民間金融機関も助かりはずである。記事によれば、福岡銀行はすでにこの制度を見込んでつなぎ融資を提供しているという。こういう動きがもっと広がれば、危機を乗り切れる企業も増えてくるだろう。

そもそも、こうした国の補助がなかったとしても、民間金融機関は、危機の影響以外には問題のない顧客を助けて、将来も良い関係を続けていくインセンティブがあるはずである。むしろ、この苦境で困っている企業がたくさんあるはずなので、新しい顧客を獲得するよいチャンスだととらえるべきだろう。もちろん、金融機関側もこの危機で苦しんでいるところはあるだろう。しかし、10年前の世界金融危機以降の規制の強化もあって銀行は自己資本を積み上げてきたし、危機以前はカネ余りの状態であったことを考えると、多くの金融機関には余力があるはずだ。

また、この危機は、多くの産業に不可逆的な影響を与えるだろう。いま起こっている働き方の変化や人との距離の取り方などは、もう危機以前通りには戻らないと思ってよいだろう。そうした新しい環境に企業はどのように対応していくべきなのか?ここでも銀行は顧客のビジネスモデルの変更を手助けするなどして、相互に利益のある関係を築いていける。金融機関への期待が高まっていると言えるだろう。

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