新型コロナウイルス関連の倒産が増えているようだ。東京商工リサーチの「新型コロナウイルス」関連倒産状況【5月1日17:00 現在】によれば、2月の2件、3月23件から4月には84件になり、5月1日の5件と合わせて114件になったという。これからも倒産の増加は続くだろう。また、コロナ感染症が終息した後でも、経済活動のあり方はコロナ以前と一変するだろうから、債務を返済できずに倒産する企業が増えるのは疑いない。
倒産は、債務が返済できなくなった企業について、いったん債権者による取り立てなどを停止させて、債務を整理し、現在の会社を再生するか、あるいは解散して経営者が新しい会社を始めるか、その時間を与える制度と考えることができる。もちろん、どちらの場合も多くの従業員が職を失うことになるので、その人たちのためのセーフティネットは必要である。また、経営者も会社の借り入れについて個人保証をしている場合は、個人破産に追い込まれることもあるので(もちろんそれも世界の終わりではないが)、2014年2月の「経営者保証のガイドライン」から目指しているような、経営者保証に頼らない融資に金融機関が移行していくのは望ましいことである。
債務の返済の見通しがないまま細々と事業を続けていくよりも、倒産して債務を整理し、再出発する方が、債務者にとっては望ましいことが多いし、債権者にとっても早めに損失を確定した方が良い場合は多い。このような場合、倒産の制度は、債権者・債務者両方にとって望ましい制度になる。
しかし、倒産の件数が急増すると、それを取り扱う機関、たとえば東京地方裁判所などがそれらを捌ききれなくなる可能性がある。これは、感染者の数が急増すると治療にあたる病院が対処できる数を超えてしまう、医療崩壊に似ている。そのような状態にならないように、今後の倒産の増加に東京地裁などが対応できるかどうか、確かめておく必要がある。
4月9日付の東京商工リサーチの記事によると、東京地裁は、非常事態宣言が出された時に、業務を縮小するので、不急の破産などの申し立てを控えるように弁護士会に要請したという。「「緊急事態宣言」の解除を待つことができない事情がある事件を除き」とあるので、コロナ関連の倒産案件は受理されると願いたいが、今後倒産件数が増えていけば、医療崩壊ならぬ地裁崩壊が起こってしまう可能性は高い。
地裁崩壊を避けるための一つの方法は、倒産が一気に集中するのを防ぐために、最終的には倒産しなければならない企業も短期的には財政支援などをして、倒産を遅らせることである。通常の状態では望ましい政策ではないだろうが、このような緊急事態で大量倒産をさばく体制が整っていない場合には、次善の政策になり得るだろう。