コロナショックによるアメリカ経済再編

NBERでは続々とコロナ関係のワーキングペーパーが現れているが、最近専用のページができて、しかも誰でもアクセスできるようになった。たぶん毎週Updateされていくのだと予想される。今日加わった論文の一つに非常に興味深いものがあった。Jose Maria Barrero, Nicholas Bloom, and Steven J. Davis “Covid-19 is also a Reallocation Shock” NBER Working Paper 27137 である。

論文は、アトランタ連銀が(Davisの所属する)シカゴのビジネススクールと(Bloomの所属する)スタンフォード大学と共同で行っているSurvey of Business Uncertaintyの最新データを使って、コロナ・ショック下での雇用と売上の見通しが企業間で大きく違っていることを発見する。具体的には、Excess Reallocationという指標を計算している。これは、例えば雇用だったら、雇用を増やす企業に関してその増加分を足しあげて、それを雇用を減らす企業に関してその減少分を足しあげて、そこから全体の雇用の純増あるいは純減の絶対値を引き、その結果を前期の総雇用で割って計算される。これは、企業間での雇用の移動のうち全体の変化を実現するのに最低限必要な量を超えるいわば余分な調整量を計算したものである。たとえば、雇用を増やす企業が全体で40万人雇用を増やし、雇用を減らす企業が全体で130万人の雇用を減らしたとすると、純減は90万人になる。この場合、どの企業も雇用を増やすことなく全体で90万人の雇用が減ればそれで済むのだが、実際には全部で170万人が移動している。すなわち80万人が余分に移動しているのである。この80万人を前期の総雇用で割ったものがExcess Reallocationになる。これは、以前から経済再編の指標としてよく使われている。

論文は、今後12ヶ月に関して企業が予想するExcell Reallocationを、雇用と売上の両方について計算している。コロナ・ショックの前の2020年1月から4月の3ヶ月で雇用の予想Excess Reallocationは1.54%から5.39%に増加した。予想売上についても同様の計算をしているが、これは0.24%(1月)から4.08%(4月)に上昇している。これらは、論文のタイトルのように、コロナ・ショックがReallocationのショックである、ということを示唆する。

この結果が意味するところは、簡単に言えば、コロナショック後の経済はその前とかなり違ったものになり、その調整がもう予想されているということである。したがって、コロナ後の政策が、こうした調整を妨げるようなものになると問題だ、と論文は指摘している。そのような危険性のある政策・制度として、労働者の給与よりも高いレベルに設定された失業保険給付、雇用維持のための補助金、様々な資格制度、創業への障害をあげている。

日本に関しても、コロナ後の調整が妨げられないように、望ましくはそのような調整が起こりやすくなるように、政策を考えていかなければならない。

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