レナウンの破綻

おととい、レナウンが民事再生法の適用を申請した。民事再生法は再建型の破綻であり、しっかりしたスポンサーがついて、きちんとした再建計画を策定・実行すれば、事業を回復し、雇用も守ることができる。しかし、レナウンの場合は、スポンサー探しに難航が予想され、詳しいことは知らないが、再建が不可能で破産手続きに移っていくのではないか、と危惧される。

レナウンはもちろん誰でも馴染みのある名前であるが、今から10年以上前に行った研究で見覚えのある名前のような気がした。これは、MITのRicardo Caballeroとシカゴ大学のAnil Kashyapとの共同研究のゾンビ企業の研究で、最終的にはAmerican Economic Reviewに論文が2008年に掲載されたので、経済学者なら読んでくれた方も多いと思う。破綻して再建されるべき企業なのに、銀行などの救済によって抜本的な改革のないまま営業を続けることによって、人的資本などの貴重な資源を収益性の低いところに停滞させるだけではなく、他の健全な企業、特に新規参入すべき企業の収益性を圧迫して、経済に悪影響を与える、という論文である。

レナウンは、その研究の中で、ゾンビと識別されたことのある企業のような気がしたので、過去のデータに遡って調べてみた。我々のデータが1980年から2002年までをカバーしているだけで、その後レナウンはダーバンと合併して、旧レナウンは上場廃止になったため、株式コードが変わったりして、データを探すのに少し時間がかかったが、見つけることができた。我々の論文では、利子支払が著しく低くて、銀行から利子減免などの救済措置を得ていると推測される企業をゾンビ企業としているが(どうしてこのような間接的な定義をするかは論文をご覧頂きたい)、やはりレナウンも2000年からサンプルの最後の年の2002年までゾンビに分類されていた。

レナウンの収益を見てみると、バブル崩壊後に激減して、結局そこから立ち直れなかったことがわかる。例えば、次の図は、我々のデータベースに入っている数字を使って、営業利益の推移を見たものだが(単位は百万円)、1991年(3月期と思われる)に58億円の赤字に転落した後、少なくとも2002年まで12年にわたって赤字が続いていた。

黒木亮氏のコラムで説明されているように、レナウンはこの後も、低迷状態を続けながら、リストラの失敗を続けて、生きながらえてきた。レナウンの不幸は、コロナの影響で破綻したことではない。バブル崩壊後、手遅れになる前に破綻、再生できずに、ゾンビ状態で20年も続けてしまったことである。

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