資金繰り対応の強化

先日成立した第二次補正予算による経済対策のうち、財政支出の金額でもっとも大きなものは、資金繰り対応の強化に分類されるものである。第二次補正予算に盛り込まれたコロナ感染症対策関係費の総額約32兆円のうち11.6兆円を占める。これに財政投融資などで手当てされる部分を足すと総事業規模は73.7兆円になるという。

その73.7兆円がどのように使われる予定かが、経産省の「令和2年度第2次補正予算案等における⾦融⽀援策」で説明されている。それによると内訳は次のようになっている。

  1. 日本政策金融公庫による実質無利子・無担保融資など      32.6兆円
  2. 民間金融機関を通じた実質無利子融資など           28.2兆円
  3. 日本貿易保険による海外日系子会社運転資金支援          1.5兆円
  4. 中堅・大企業向け危機対応融資と資本性劣後ローン       10.0兆円
  5. 中小企業向け資本性資金供給                   1.4兆円

大部分が融資の形態になっている。緊急融資は危機時に流動性不足に陥った企業を助けるためには有効だが、このタイミングだと多くの企業で問題の本質が、流動性から債務超過の問題あるいはポスト・コロナあるいはWithコロナの時代の事業そのものの収益性に関する問題に移りつつあるところではないか?第一次補正予算で迅速に対応すべきことで、今頃発動されてもその効果は少ないかも知れない。最悪の場合は、無利子とはいえ債務が増えるだけで、かえって事業の立て直しや転換を難しくするかもしれない。

4のうち資本性劣後ローン(5兆円までということだが)と5の資本性資金供給は、債務超過の問題があればそれを解決した後でなら、立て直しのために資本に近い資金が入るので望ましい政策であろう。民間の同様の資金をクラウドアウトしないようにしなければならないが、ポスト・コロナの世界がいまの世界とかなり違ってくるとすると、立て直しが必要な企業は多くなるだろうから、政府が資本性資金を供給しても民間のファンドなどが困るということはたぶんないだろう。

政府は、この70兆円以上の支援に加えて、金融機能強化法の拡充も重要だとして、金融庁で金融機能強化法の見直しを始めているという。具体的には、第2次補正予算で民間金融機関に公的資本を注入する時の枠を12兆円から15兆円に増加し、資本注入する金融機関の経営陣の責任を問わないばかりでなく、収益性や効率性の向上も認めないとする。これは問題だろう。財務状態が悪化した金融機関を再建策もないままただ生きながらえさせるだけになるからである。それは、金融機関の最終的な破綻を防ぐことはできず、最終的な損失を大きくするだけだということは、90年代末の日本の銀行危機でも2000年代末の世界金融危機でも明らかになったことである。また、銀行の健全性を確かめずにただ資本を注入するのは金融危機を止めるのにも役立たない。98年の日本で、そして2008年のアメリカでただ金融機関に資本を注入しただけでは、事態は改善しなかった。日本では99年になって特別検査を経てから、そしてアメリカでは2009年のアメリカではストレス・テストを経てから、それぞれの銀行でどれくらいの資本が不足しているのかというのがある程度明らかになったところでその不足額に応じて資本注入を行って、ようやく落ち着いたということがあった。98年や2008年の失敗をまた繰り返すような仕組みをわざわざ作ってしまってはいけない。

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