骨太方針に向けて

小泉内閣が始まった2001年、経済財政諮問会議が設置され、経済改革の指針をたてそれに沿うような予算編成を促すために、「骨太の方針」が作成・発表されてきた。「経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」というのが最初の名前だったようだが、「骨太の方針」という呼び方が定着し、いわゆる小泉改革の中心的なアイディアを示す文書になった。このやり方は、その後の自民党政権でも受け継がれたが、2009年を最後に、民主党政権では中断された。その後、安倍内閣が成立し、2013年からまた「骨太の方針」が復活した。最近ではどうも「骨太方針」というのが一般的らしい。

「骨太方針」は、毎年6月に策定されるが、その作業が経済財政諮問会議で始まったようだ。同じ6月には毎年「成長戦略」も日本経済再生本部で策定されるが、その重要部分は「骨太方針」に基づいている場合が多い。昨日開かれた経済財政諮問会議の資料として、会議の民間委員による「骨太方針に向けて~感染症克服と経済活性化の両立~」というレポートがウェブサイトで公表されている。

毎年この段階から骨太方針の策定を注意して追ってきたわけではないし、これが最終版や成長戦略にどれほど反映されるのかもわからないが、的を得たところが多いというのは、一読した感想である。

ざっと、見出しを拾ってみると次のようになる。

  1. 新たな日常の定着・加速に向けて~日本社会の進化を元に戻さない~
  2. 世界に開かれた活力ある日本経済の実現
  3. 新たな社会課題に応える科学技術・イノベーション
  4. 強靭かつ柔軟、安心できる社会保障の構築と包摂的な社会の実現
  5. 新型感染症に対応した経済社会の変革とそれを支える経済財政運営

全体として、コロナ感染症に立ち向かう中で起こってきた変化を「進化」ととらえ、それをさらに推進するとともに、明らかになった問題点を克服するために、さらなる改革が必要だ、というメッセージでその通りだと思う。たとえば、1の中では、

公的分野のデジタル化のこれまでの取組は失敗であったとの猛省に立ち、「できることを計画にしていく」のではなく、「必要なことを必ず計画に盛り込み、それを実現する」という、従来とは異なる次元・手法で、デジタル時代に対応した徹底した規制改革、人材育成、民間人材活用を強力に進めるべき。

として、「オンライン・リモート化による新サービス(行政サービス、遠隔診療・服薬指導、遠隔教育、Eコマース等)」と「新たな働き方とワーク・ライフ・バランスの改善」の必要性を指摘している。コロナ危機に陥る前にいままでの政策の失敗に気付くべきだったとも言えるが、少なくとも今後は規制改革や人材育成を行うという方向性はあっていると思う。ただし、「民間人材活用」というのは政府部門の改革でよく使われる言葉だが、民間から活用すればただそれでよいわけではない。民間が官僚よりも有能な人材の宝庫だったら日本経済はこれほど停滞しなかったのではないか。

5の中では次のような指摘がある。

今回の新型感染症への対応や経験を踏まえ、優先課題の再検討と資源配分のメリハリの強化、制度・規制と歳出の一体的見直し、EBPMの徹底等を進めることで経済財政一体改革の実現に向けたワイズスペンディングを強力に実行すべき。

これももっともな指摘である。問題は、このような妥当な問題意識を反映した政策枠組みを作って、さらに実行していけるかどうかであろう。

いままでの感染症への対応を見ていると、それらはEvidence Basedだったとは言えないだろう。たとえば、外出・接触の8割削減とかいう目標もその根拠が乏しかったことは、同僚の岩本康志教授がブログで示している。そして、その目標を達成するための手段は、自粛要請やStay Homeのメッセージだけで、どうして感染症が収まったのか(まだ予断は許さないが)わからないところがある。

また、このレポートが指摘する方向とは逆の方向に進み始めているものもある。たとえば、レポートは「新しい生活様式を新しいビジネスチャンスとすべく、今までの概念にとらわれない大胆な規制緩和、起業・新事業・業態転換支援を推進すべき」と論じるが、実際に行われている政策は、雇用調整助成金や持続化給付金など「起業・新事業・業務転換」を妨げるようなものであり、それらは第二次補正予算で拡張された。

長くなってしまったので、今日はこの辺りでやめておこう。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。