日銀の資金繰り支援特別プログラム

だいぶ間が空いてしまった。昨日の金融政策決定会合で、日銀は現在の金融緩和を続けると同時に、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの総枠を約110兆円に広げた。今日は、新型コロナウイルス感染症に対するこれまでの日銀の政策をまとめておきたい。

日銀が最初に新型コロナウイルス感染症に対応するためと明示的に打ち出したのは、3月16日の金融政策決定会合だった。もともとは3月18日、19日に開催予定だった会合を2日前倒しして、しかも1日で行った。この会合では、すでに2016年から行ってきた極度の金融緩和であるマイナス金利政策とイールドカーブ・コントロールに加えて、(1)米ドル資金の流動性供給も含めた「一層潤沢な資金供給」を実施し、(2)追加的な企業金融支援を行い、(3)ETFおよびJ-REITの買入枠を増加し、年間それぞれ約12兆円および約1,800億円を残高に加えることにした。このうち、(2)の企業金融支援は、民間企業債務を担保に最長1年の資金を金利ゼロで供給する新しい特別オペの仕組みを導入し、さらにCP・社債等の買入枠を2兆円増加し、CP等の最高残高は約3.2兆円、社債等のそれは約4.2兆円になった。

4月27日の会合では、さらに、(1)CP・社債等買入上限を合計約20兆円に増額し、(2)3月に導入した新型コロナ対応金融支援特別オペの担保を家計債務を含めた民間債務全般に拡大し、対象先に系統会員金融機関等を追加し、そしてオペの利用残高に相当する当座預金に+0.1%の利息をつけて拡充し、(3)国債をさらに積極的に買い入れることにした。

その金融政策決定会合から1ヶ月経たないうちに、日銀は臨時の金融政策決定会合を5月22日に召集し、そこでは、中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」が導入された。これは、緊急経済対策で民間金融機関にも促された無利子・無担保融資を中心とする融資を担保に日銀が利率ゼロで貸し出し、さらに利用残高に相当する当座預金に0.1%の利息を付けるものである。4月27日の(1)CP・社債買い上げと(2)拡張された特別オペに今回の新たな資金供給手段を加えて、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」と呼ばれることになり、総枠は約75兆円になった。

同じ5月22日に、日銀の黒田総裁は、麻生副総理兼財務大臣と共同談話を発表し、「企業金融の円滑化と金融市場の安定に努め、事態を収束させるためにあらゆる手段を講じる」とした。

そして、昨日6月16日の金融政策決定会合では、現在の緩和政策の維持が決定され、特別プログラムの総枠が約75兆円から約110兆円に拡張された。

以上が、いままでのコロナ感染症対応としての金融政策の変遷であるが、その効果はどのようなものだったか?次のグラフは、今年の初めから現在までの、日経平均ボラティリティ・インデックス10年物の国債利回りをプロットしたものである。2月の末から3月の半ばにかけて、ボラティリティも国債利回りも急上昇したが、日銀がコロナ感染症対策の金融政策を明確に打ち出してからは、ボラティリティも国債利回りも低下するようになり、比較的安定していた動きを示している。この間、2度にわたる補正予算により新規国債発行は急増したから、それでも金融市場がいまのところ安定しているのは、日銀の金融緩和が(いまのところ)功を奏している証拠だろう。

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