2020年8月16日
ふと思ったのだが、MMT(Modern Monetary Theory)というのは、セイの法則の逆なのではないだろうか?深く考えたわけではないし、そもそもMMT自体より理解しているわけではないので、たぶん間違っていると思うが、念のためにここに書き留めておこうと思う。
セイの法則というのは、これも現代の経済学におけるごく一般的な理解しかしていないのだが、「供給が需要を作る」という形でよく言い表される。何か価値あるものが作り出される時には、その対価を受け取る人がいて、その人の所得が需要を作るから、経済全体として需要が不足して停滞することはない、という命題として理解されるのが一般的だろう。
これに対して、MMTは、ぼくの理解する限り、政府は貨幣を発行して需要を作ることができるので、その気になれば働く気のある人すべてを雇うことができる、と論じる。雇われた人は生産活動に従事するのだろうから、この意味で、貨幣が需要を作り、その需要が供給を作るということを言っているのに等しいのではないだろうか?働く気があるのに働いていない人が一人でもいる限り、供給側の要因で経済が停滞することはない。
と考えたが、そもそもMMTを深く考えたことがなかったので、少しWebで勉強してみようと思って、いくつか見てみると、Brad DeLong のBlogにわかりやすい解説を見つけた。去年の1月のブログだが、これによれば、MMTの主張は基本的にAbba Lernerが言ったFunctional Financeと同じになる。だとすれば、これは供給制約を考えなくてよい状況の通常のマクロ経済学とかわらないので、理解しやすい。したがって、現在の日本のように、インフレの兆候がなく、利子率もゼロに近い状況だったら、財政赤字を貨幣の増発でファイナンスしても大丈夫になる。問題はDeLongも指摘しているように、市場期待が急激に変化することによって利子率が急騰してしまう危険性である。
DeLongの理解はわかりやすいと思ったが、MMTを主張する人達から見ると、これも間違っているらしい。主にMMTを主張する人達が書いているNew Economic PerspectivesのL. Randall Wrayの論考のよると、MMTのポイントは総需要のコントロールではなく、完全雇用である、という。財政赤字を貨幣増加でファイナンスするだけだったら、完全雇用が実現される前にインフレが来てしまう可能性があるという。しかし、財政支出の中身を調整することによって、インフレを起こすことなく完全雇用を実現することが可能であり、そこが通常のケインズ経済学とは違うのだと言っている。