【2020年9月5日】
自民党総裁選を控えて、3人の総裁候補がそれぞれの政策ビジョンを発表した。菅義偉氏は「自助・共助・公助、そして絆」というタイトルで、岸田文雄氏は「分断から協調へ」というタイトルで、そして石破茂氏は「納得と共感」というタイトルだ。それぞれのビジョンから経済政策にあたるものを抜き出して、簡単に整理しておこうと思う。
菅義偉氏の主要経済政策
- 役所の縦割りの打破
- 行政のデジタル化
- 雇用確保と事業継続:持続化給付金、無利子・無担保融資、GoToキャンペーンなど
- 活力ある地方を作る
- 最低賃金の全国的引上げ
- 安全の社会保障:不妊治療の支援拡大、待機児童問題の終了
岸田文雄氏の主要経済政策
- 中間層の復活・格差の是正:最低賃金の引き上げ、教育費・住宅費の負担軽減
- 高付加価値モデルへの産業構造の転換:高等教育への支援強化、「日本イノベーション基金」の創設など
- 「デジタル規制改革」と「データ庁」の設置
- サプライチェーンの多角化や製造業の国内回帰、経済安全保障
- 少子化対策:不妊治療への支援、育児休業の拡充
- 地球温暖化・エネルギー対策:再生可能エネルギーの推進、環境に優しい素材開発
- 財政健全化
- デジタル田園都市国家構想:地方の生活の利便性向上、農林水産業の成長産業化、「災害に強い地域づくり」、地方の交通・物流インフラの整備など
- 活力ある健康長寿社会へ:社会保障制度の縦割り是正、民間活力の導入など
石破茂氏の主要経済政策
- デフレに後戻りしないマクロ経済政策の継続:財政規律にも配慮した経済財政運営、低所得者や子育て世代などへの財政支援、経済金融総合対応会議(日本版NEC)の創設
- 地域分散と内需主導型経済への転換:東京一極集中是正担当大臣(仮称)の設置、地方公共団体のガバナンスや機能強化、霞が関や企業からの人材移転、地方経済・農林水産業の高付加価値化、男女の賃金格差の解消、第四次産業革命の障害となっている規制や制度の改革
- 「デジタルの通った水と緑」豊かな「スーパーローカル」の実現:エネルギーの地産地消、自動運転・ドローンによる配送システム、遠隔医療システム、AIによる介護プログラムの最適化、高精度の災害予測、ドローンによる遭難者捜索・鳥獣監視システム、ヘルスケア産業と危機管理産業の発展
- 地方移住の推進:21世紀中頃まで約300万人
- 持続可能な社会保障制度の確立
- 「幸せ実現国民会議」(仮称)の創設
こうしてみてみると、言葉遣いなどには違いがあるが、政策分野としては共通のものが多い。3者とも、地方創生、社会保障の充実、デジタル化の推進、格差の是正といったところを重視しているようだ。経済政策面に限れば、3者の違いはほとんどないと言えるだろう。これは、経済政策に関しては合意があるということで、悪いことではないだろう。