国内投資促進事業費補助金

2020年9月10日

2,3日前になるが、「コロナで生産回帰 補助金競争率11倍」という日経の記事が目を引いた。「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に、応募が殺到しているという記事である。新型コロナ感染症によって明らかになった国際サプライチェーンの脆弱性に対応するための、生産ネットワークの一部の国内回帰を後押しするための補助金にたくさんの応募があったという内容である。コロナ対策として第一次補正予算で約2200億円が計上された補助金は、第一弾として約600億円の案件が採択された後、残りの約1600億円についての応募が7月末に締め切られたが、応募総額は約1兆7640億円になったという。

一見すると、たいへん好調で、政策は成功したように見えるかもしれないが、そうでもない。コロナ危機で仕入れに支障があった会社は、補助金がなくても、ある程度国内回帰を実行するだろう。実際この記事でも「補助金がなくても国内生産は決めていた」という採択された企業の担当者の談話を紹介している。補助金があったから、国内生産を増やすことを考え付いた、という企業がどれほどあるか、疑問である。

政策の効果は、その政策がなかった場合に比べてどれくらい国内投資が増えたかで判断されるべきだから、採択された企業のほとんどは補助金がなくても国内投資を行っていた企業だったとしたら、政策の効果はほとんどなかったことになる。結局、2200億円のほとんどはもともと国内生産の増加を決めていた企業への納税者からの移転になってしまう惧れがある。

政策の効果があったとしても、国内回帰が本当にサプライチェーンを頑健にするかどうか、という問題が残る。この記事で、早稲田大学の戸堂康之教授が、「中国への過度な依存を減らす対処法はより多様なグローバル化であるべきだ」と言っているとおりである。

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