2020年12月31日
今日は、来年度の予算案の方を見ておこう。概要は以下の通りである。
単位:億円 | 令和2年度(当初) | 令和3年度予算案 |
【歳出】 一般歳出 うち社会保障関係費 新型コロナウィルス感染症対策予備費 地方交付税交付金等 国債費 うち債務償還費 うち利払費 臨時・特別の措置 | 617,184 356,914 158,093 233,515 145,394 83,904 17,788 | 669,020 358,421 50,000 159,489 237,588 147,317 85,036 |
【歳入】 税収 その他収入 公債金 うち債務償還費相当分 うち利払費相当分 基礎的財政収支赤字相当分 | 635,130 65,888 325,562 145,394 83,904 96,264 | 574,480 55,647 435,970 147,317 85,036 203,617 |
計 | 1,026,580 | 1,066,097 |
ここで比べているのは、今年度の当初予算であり、実際はこの後3回にわたる補正予算を経て、その総額は179兆円に公債金は113兆に膨れ上がることになったのは前回見た通りである。もちろん、来年度も場合によっては、補正予算により、予算規模が大幅に膨らむことはあり得る。
予算案を今年度の当初予算と比べると、その総額はあまり変わらず、総額は106兆6097億円になっている。一般歳出費は令和2年度予算に新型コロナウィルス感染症対策予備費として追加された5兆円を加えたものとほぼ同じである。国債費もごくわずかしか増えないという見通しである。ただし、税収が6兆円ほど減少すると見込まれているので、公債金に頼る部分は40%を超え、基礎的財政収支赤字(財政赤字から利払費を引いたもの)は20兆円に増えると見込まれている。もっとも、第3次補正予算によると、今年度の税収が当初予算の想定に比べて8兆円ほど少なくなることが予想されているから、来年度は少し税収が回復すると見込まれている。
歳出の内容の方を見ると、例年通り一般歳出の大半は社会保障関係費であり、日本の財政再建のためには社会保障制度を改革せざるを得ないという状況は変わらない。その他は、今年度の第3次補正予算に呼応して、コロナ感染症対策とポスト・コロナの経済対策、構造改革(デジタル社会やグリーン社会に向けて)のための歳出が大きくなっている。
社会保障関係費の内訳(下の表)を見ると、全体的には伸びを抑えようとしているが、雇用対策費が2倍以上に伸びていて目立つ。しかし、これは一般会計で支払われる部分だけで、雇用対策全体でどれくらい伸びているかは、労働保険特別会計の方も見てみないとわからない。
単位:億円 | 令和2年度 | 令和3年度 |
社会保障関係費 総額 年金給付費 医療給付費 介護給付費 少子化対策費 生活扶助等社会福祉費 保健衛生対策費 雇用労災対策費 | 357,401 125,232 121,546 33,838 30,387 40,824 5,180 395 | 358,421 127,005 119,821 34,662 30,458 40,716 4,768 991 |
コロナ禍の中で、積極的な雇用政策の遅れが明らかになったいま、雇用対策費を増やすのは望ましいことだろう。ただし、「令和3年度社会保障関係予算のポイント」の9ページ、「(6)労働・雇用環境の充実」という項目にまとめられている雇用対策としての出費を見ると、やはり雇用調整助成金のような現状維持・企業保護の政策が目立っている。以下に列記しておく。カッコ内の数字は労働保険特別会計の予算(それの方が大きい)を含む。
①雇用調整助成金の特例措置(6,240億円)
②在籍型出向の活用による雇用維持への支援(537億円)
③地域活性化雇用創造プロジェクト(103億円)
④感染症の影響による離職者を試行雇用する事業主への助成(30億円)
⑤生産性向上、賃金引上げのための支援(12億円)
⑥男性の育児休業の取得促進(67億円)
「(9)その他」の項目の中にも、職を失っただけでなく、生活にも困っている人達のための対策として、住居確保給付金等554億円と自殺総合対策34億円が計上されているが、他の政策に比べると規模が小さい。