在籍型出向の活用による雇用維持への支援

2021年1月1日

前回に令和3年度予算の社会保障関係費を見たが、その中に「在籍型出向の活用による雇用維持への支援」という項目があり、537億円が予算計上されている。もう少し詳しい説明が、厚労省のサイトにある。これによると、人員過剰になった企業が労働者を解雇せずに一時的に休業などにした時、その費用の一部を国が支払うという、通常の雇用調整助成金とは違い、過剰になった労働者を人手不足の企業に出向させる場合に、出向元と出向先の企業の両方に財政的支援を与える制度のようだ。雇用調整助成金が、「調整」とは名ばかりで、むしろ調整に抵抗する企業を支援するために使われているという批判をかわすために、労働者が過剰な企業から不足している企業に移動するのを手助けする制度を作ったということだろう。

この制度は、一見すると労働の移動を促進するようなものに見えるが、よく考えると問題をはらんでいることがわかる。まず、この制度で雇用過剰企業から労働者を出向で受け入れる企業は、人手不足の企業であり、もしこの制度がなくても雇用を増やしていた企業だということに注意しよう。そのような企業はこの制度により国からの支援があるために、追加の労働者を安く雇うことができるようになる。その時、追加的に雇う労働者の数が多少増えるかも知れないが、この制度にのらない労働者(すなわち雇用過剰企業の出向者ではないもの)を雇うインセンティブは少なくなる。すなわち、そもそも雇用が守られなかった人達の再就職機会が少なくなるという問題がある。

結局守られるのは、終身雇用の労働者たちで、そこから外れるパート労働者や派遣労働者などは、守られない。守られないどころか、この制度でさらに不利な立場に立たされることになるのではないか?

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