2021年1月2日
カーボンニュートラルを2050年までに達成するというのが、菅政権の目玉政策の一つである。その中身がまだ定まっていないようだということは、2ヶ月ほど前のブログで書いたが、その後の発展を整理したい。
首相官邸のウェブサイトには、「「国民のために働く内閣」菅内閣政策集」という自画自賛のタイトルのページがあって、そこで菅内閣が取り組んでいる政策をまとめている。そこでリンクされている「グリーン社会の実現」というページが、カーボンニュートラルを実現するための政策を集めていると思われる。ただ、今日の段階では、あまり詳しい内容はない。「グリーン成長戦略の実行計画」というところに、詳しい実行計画があるのだろうと思うと、現段階では、それに関連する梶山経産大臣の10月26日の記者会見が載っているだけである。また、「環境統計集」のリンクをフォローすると、環境省のウェブサイトに来るが、最新の統計は令和元年版(しかも試行版?)でたとえば温室効果ガス排出が載っているExcelファイルをダウンロードしてみると、2014年が最新の数字である。今後、このサイトでの情報公開がきちんと行われることを願いたい。
経済産業省のニュースリリースには、12月25日付で、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました」というページがあるので、ただここにリンクすれば良いような気がする。そこに添付されているPDFファイルを見ると、現在考えられている具体的な取り組みが明らかになる。
まず強調されるのは、カーボンニュートラルを目指すのは、「経済成長の制約やコスト」ではなく、「成長の機会」として捉えるべきだという視点である。そして、産業政策としてグリーン産業を育てていくのが、「グリーン成長戦略」だとする。
具体的には、「2050年カーボンニュートラルを実現する上で不可欠な」14の分野をあげ、それぞれについて「実行計画」を策定するとある。また、それらの分野を横断する政策ツールとして5つのタイプのものを挙げている。
14の分野とは、次のようなものである。
- 洋上風力産業
- 燃料アンモニア産業
- 水素産業
- 原子力産業
- 自動車・蓄電池産業
- 半導体・情報通信産業
- 船舶産業
- 物流・人流・土木インフラ産業
- 食料・農林水産業
- 航空機産業
- カーボンリサイクル産業
- 住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
- 資源循環関連産業
- ライフスタイル関連産業
有望な産業をあらかじめ指定してそれらを優遇するという、伝統的な産業政策の枠組みである。このような昔ながらの産業政策の問題点は、どのような産業が有望なのか、この場合は2050年までのカーボンニュートラルを実現する上で重要なのかは事前的にわからない、ということである。いまは知られていないような技術や製品が2050年カーボンニュートラルを実現する上でカギになるかも知れないし、産業はあっていたとしても、その産業でいま中心になっている企業がカーボンニュートラルを実現するためのイノベーションをリードするとは限らない。ただし、このリストは、かなり広汎な産業を指定していて、その境界は必ずしも明らかではない。これは良い点かも知れない。
分野横断的な政策としては、次のようなものが挙げられている。
- 予算:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発と実装の呼び水にするために、2兆円のグリーンイノベーション基金をNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に創設する。
- 税制:2050年カーボンニュートラルに向けた研究開発投資・設備投資などを促すための優遇税制
- 金融:従来のグリーン・ファイナンスに加えて、トランジション(低炭素化)・ファイナンス、イノベーション・ファイナンスの充実のための金融システムを作り上げる
- 規制改革・標準化:新技術の需要を創出するような規制強化、新技術を想定していなかった規制の合理化、新技術を世界で活用しやすくするような国際標準化等
- 国際連携:新興国等の海外市場の獲得、対日直接投資などを通じた海外の技術・経営のとりこみ
これを一見してわかるのは、新技術への期待である。カーボン・ニュートラルを実現するためには、いま存在しない新しい技術が開発されるのを期待する、というのが、この政策の基本姿勢である、と言ってよいだろう。もちろん、新技術は必要かもしれないが、少なくともそれと同時に、温室効果ガスの発生を少なくするような方向に、エネルギー需要や生産のやり方を変えていくという方法も必要であろう。そのためには、炭素税や排出量取引制度などの整備が重要になるが、現状の「グリーン成長戦略」では、それらは規制改革・標準化のごく一部として言及されているだけで、両方とも「課題が存在している」とされ、積極的には考えられていないようである。また、「日本は、「地球温暖化対策のための税」を導入済である」としている。その税率が低すぎるという問題については、指摘もなければ、検討すら予定されていないようだ。
地球温暖化が進むと、人類が生存出来なくなる、との危機感が、そもそもの出発点ではないか、と思いました。思うに地球は奇跡的な存在では。人知の及ぶ限り地球外に生命体はいません。絶妙な条件が揃って生命体がある。当然のようにあるものを「空気みたい」といいますが、「空気」は実は絶妙な条件のもとにしか存在しない奇跡的なもの、とも言えるように思います。地球存続のために必要な対応である、との考え方が原点かと思いました。その対応のために投資がなされ結果的に経済成長につながる。地球がおかしくなったら、経済成長も何もあったものではありません。成長戦略というのは、産業界向けの言い方かも知れませんが、そう言うと「何%成長の為には、、、」との考え方になってしまうように思いました。
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