2021年2月6日
先日のブログで日本の生活保護に滞留する人の比率が多いので、経済的に困ってしまった人達を支援して、再び自立できるように助ける機能を果たしておらず、問題解決のためには負の所得税などの他の手段が必要ではないかと論じた。さっそくコメントがついて、生活保護を受けている人の中には高齢者や障害者・傷病者も多く、経済的自立を求めている人ばかりではないので、一気に負の所得税の議論に持っていのは、論理の飛躍ではないかという指摘があった。まったくその通りである。経済的要因(例えば失業)によって生活保護を受けるようになる人は、比較的早く生活保護から抜け出ているとすれば、生活保護もセーフティネットとして十分に機能を果たしているということになるからである。
生活保護への世帯の出入りをもっとよく理解するために、今日は、先日見た生活保護廃止だけではなく、生活保護開始の方も見てみたいと思う。次の表は、先日と同じ『被保護者調査』から、年度別の保護開始世帯数とそのうち経済的理由によるものを示したものである。ここで経済的理由と呼んでいるのは、「失業」、「事業不振・倒産」、「その他の働きによる収入の減少」、「貯金等の減少・喪失」を足しあげたものである。「老齢による収入の減少」、「傷病」、「要介護状態」、「働いていた者の離別」などは含めない。
年度 | 保護開始世帯数 | 経済的理由による 保護開始 (比率) |
2012 | 239,511 | 108,113 (45.1%) |
2014 | 205,699 | 96,122 (46.7%) |
2016 | 190,276 | 93,105 (48.9%) |
2018 | 178,903 | 91,072 (50.9%) |
生活保護開始になる世帯のうち、約半分は経済的な理由によるものだということがわかる。これに対して、先日見たように収入の増加などによって保護が終わりになるのは全体の保護廃止世帯数の2割に達しない。数にすると、毎年9万世帯以上が経済的理由で生活保護に入るのに、そこから抜け出すのは3万世帯程度だということになる。やはり、いったん生活保護に入ってしまうと、死ぬまで抜け出せない場合が多いということがうかがえる。