実質的失業者

2021年5月15日

昨日のブログで参照した「バランスシート問題研究会の提言2」の著者の一人である野村総研制度戦略研究室長の梅屋真一郎氏はその同僚の武田佳奈氏とともに、実質的失業者について調査してきた。提言でも論じているが、特に女性のパート労働者の中には、雇用関係があり、実際に働いているので、失業者にも休業者にもカウントされていないが、働く時間が大幅に減ってしまった人達がいる。今年の2月のアンケート調査による分析が野村総研の3月4日のメディアフォーラムで公表され、武田氏が「日経ビジネス」にそれをもとにした論考も寄稿している。

64,943人のパート労働者(女性57,131人、男性7,812人)を対象にしたアンケートの分析によると、女性の13.1%が50%以上のシフトの減少を経験していると回答している。このうちなんと69.3%が休業手当を受け取っていない。したがって、女性のパート労働者の9.1%(13.1%x69.3%)が、50%以上のシフト減を経験しながら休業手当をもらえていないということになる。女性のパート労働者の総数は約1,135万人だから、103万人がこのような実質的失業状態にあると推測される。同様に、男性について実質的失業者数を推定すると約43万人になる。かなりの人数のパート労働者がたいへん深刻な収入減に見舞われながら、セーフティネットの対象外になっているのである。

梅屋氏と武田氏の研究は、日本のセーフティネットの限界の一側面をはっきりと捉えていて、非常に重要だと思う。彼らも指摘しているように、パート労働者の一部は雇用保険の被保険者になっていると思われるが、その場合は企業が休業手当を払うために雇用調整助成金を利用できるはずである。企業が休業手当を支払わない場合は、労働者が厚生労働省に直接申し込むこともできる。しかし、梅屋・武田両氏の研究によれば、こうした制度はパート労働者に知られていない。厚生労働省のウェブサイトにその説明はあるのだが、基本的に企業を対象にした書き方であって、パート労働者に届かないのは不思議ではない。もう少し、積極的に労働者を直接助けていくような制度が必要であろう。

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