実証的にも最低賃金の引上げが雇用全般に与える影響はほとんどゼロに近いという結果がほとんどである。たとえば、Doruk Cengiz, Arindrajit Dube, Attila Lindner, Ben Zippererによる2019年に Quarterly Journal of Economicsに出版された論文は、Current Population Survey というアメリカの個人レベルのデータから、州別、25セント幅の賃金グループ別の雇用の四半期データを構築して、州の最低賃金の引上げ前後で、最低賃金以下の雇用がどれくらい減って、最低賃金を少し超える賃金の雇用がどれくらい増えたかを見ることによって、最低賃金の引上げが雇用に及ぼす影響を推定している。非常に注意深い分析で、現状では最も信頼できる結果ではないかと思われる。この論文によれば、最低賃金の引上げ後5年間、この最低賃金近傍の雇用の変化はほぼゼロだったという。すなわち、最低賃金の引上げによって影響を受けそうなグループの雇用は影響を受けなかったということである。