第二次補正予算

今日、新型コロナウイルス感染症による経済的悪影響に対する追加的経済対策のための第二次補正予算が決定された。財務省ウェブサイトからその概要を見ると、次のようになる。

  1. 雇用調整助成金の拡充等                  4,519億円 (この他に労働保険特別会計から8,576億円の措置)
  2. 資金繰り対応の強化                   116,390億円 (この中には、中小事業者向けの融資88,174億円、中堅・大企業向け融資4,521億円、資本性資金の活用という項目で23,692億円が含まれる)
  3. 家賃支援給付金の創設                   20,242億円
  4. 医療提供体制等の強化                   29,892億円 (これには医療・介護従事者のための支援交付金22,370億円、医療機関等への医療マスク等の配布費用4,379億円、ワクチン・治療薬の開発のための2,055億円が含まれる)
  5. その他の支援                       47,127億円
  6. 予備費                         100,000億円

となっている。総額約32兆円の大規模補正である。うち10兆円が予備費として積まれており、機動的に使えるようになっているようだ。これが、どのような時に、どのような手続きを経て使われるようになるのかは、詳しい説明はまだないように思う。

5番目のその他の支援には、次のような項目が並ぶ

  1. 地方創生臨時交付金の拡充                 20,000億円
  2. 低所得のひとり親世帯への追加的な給付            1,365億円
  3. 持続化給付金の対応強化                  19,400億円
  4. その他                           6,363億円(これには持続化補助金等の拡充1,000億円、農林漁業者の経営継続補助金200億円、文化芸術活動の緊急総合支援560億円、自衛隊の感染症拡大防止・対処能力の向上のために63億円、地域公共交通における感染拡大防止対策138億円、個人向け緊急小口資金等の特例貸付2,048億円、教員、学習指導員等の追加配置318億円、教育ICT環境整備等のための光ファイバー整備502億円、学校再開に伴う感染症対策・学習保障等421億円、スマートライフ実現のためのAIシミュレーション事業?14億円などが含まれる)

全体的に見て、危機への対応という色合いが強いものになっている。第一次補正予算と同様、当面の生活を守るため、雇用・事業を維持するための助成金や融資がほとんどである。緊急事態宣言が解除され、これからは経済再建にシフトしていこうとする現在では、タイミングの良い政策というよりは、遅れてきた緊急対策という印象が強い。もとの緊急対策が不足していて、執行も遅れているという点を繕おうとしているとも取れてしまう。ポスト・コロナの社会に向けて、どのような政策が必要なのか、という視点があまり見られないのは残念である。

特に問題なのは、資金繰り対応にいまだに支援のほとんどを充てていること、産業の必要な再編よりも現状の持続に偏っていること、それから補正予算の数字には入っていないが、金融機能強化法を改定して民間金融機関に資本を入れやすくする仕組みを作る、というようなところである。この辺りは明日以降踏み込んで考えてみたい。

第二次補正予算」に2件のコメントがあります

  1. 星さん

    いつもタイムリーでかついろいろ考えるところを提供いただくブログをお送りいただき、ありがとうございます。

    補正予算に限らず金融機関等の対応を見ていても、足元の対応に忙殺されていてwith/after
    COVID-19の世界にどのように対応するのか、構造的な問題への対応含めて検討がされていないことを懸念しています。金融庁時代の経験でも、危機が起きると目の前の消火活動にリソースを集中投下するのはやむをえないところもありますが、それも危機後の世界をどうするのかの大きな構想を持ってやるのとそうでないのとで、相当差があると思います。コロナショックを機に従来から認識されていた問題及び新たに認識された課題の対応に向けた改革が必要と考えますが、その点があまり議論されていない現状を見ていると、with/after
    COVID-19に向けて新しい戦略やビジネスを構想している外資系金融機関や非金融のプレーヤーとの格差はさらに開くことになりかねないと懸念しています。

    佐々木

    2020年5月27日(水) 21:30 星岳雄の経済政策覚え書き :

    > 星 岳雄 posted: ”
    > 今日、新型コロナウイルス感染症による経済的悪影響に対する追加的経済対策のための第二次補正予算が決定された。財務省ウェブサイトからその概要を見ると、次のようになる。
    > 雇用調整助成金の拡充等 4,519億円 (この他に労働保険特別会計から8,576億円の措置)資金繰り対応の強化 116,390億円
    > (この中には、中小事業者向けの融資88,174億円、中堅・大企業向け融資4,521億円、資本性資金の活用という項目で23,692億円が含”
    >

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    1. その通りだと思いますね。今は、出遅れているがまだ遅すぎはしない、といったところでしょうか?真剣な対策を考えなければならないと思います。

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